変わったこと、変わらないこと。

インペクを拝命しております狂箪笥(くるいたんす)です。

さて、フラ午後(フランス音楽の午後2018)に向けての練習がスタートしました。

今までのOFJは前音楽監督の右近大次郎先生を中心に、その創世記は色々な演奏機会を貪欲に捉えてお披露目し、その後4回の定期演奏会と3回のスピンオフ演奏会(フランス音楽の午後)を実施してきました。そして本年(2018年)1月の第4回定期演奏会を最後に、右近先生は新たな道に進むべく、当団音楽監督の職を退かれました。

今度の「フランス音楽の午後2018」は、音楽面はもちろんのこと、運営面でも今まで何だかんだで頼りにさせていただいていた右近先生の牽引力を借りずに、我々が自力で取り組む最初のシーズン、格好良く言ってしまえばOFJ「第2章」です。

右近先生の後任として新たにお招きした方は、丁寧でわかりやすいトレーニングに定評があり、あちこちのアマチュアオーケストラで引っ張りだこの小松拓人先生。まだ本日現在で合奏2回、管分奏1回しかご指導いただいていませんが、お蔭さまで無事に「OFJ第2章」のスタートができたかなと勝手に思って勝手にほっとしております。

そして筆者が合計3回の「小松先生練」で思ったこと。

マエストロが変わっても、OFJのカラーは変わりませんでした。

今さらですが、OFJは「フランス音楽を演奏するオーケストラ」。得手不得手はともかく、フランス音楽に少なからず興味をもっている人々の集まりです。そのためか、団内では自由闊達な議論(選曲だけか?)こそありますが、基本的には「同志」であり、練習の雰囲気もアットホームで、パートやセクション間の垣根をあまり感じません。また小編成ゆえなのでしょうか、隣にひそっと話しかけると周りや指揮者へも丸聞こえで、変なことをいうとオケ全体がドッとうける一幕もあったりします。

ここまではよくある話だと思いますが、筆者がOFJの練習で何よりも好きなのは「双方向コミュニケーション」、つまり指揮者と奏者の意見交換というか、オケ側も積極的に質問を投げかけ、マエストロもそれに答えながら意識を合わせていく練習のプロセスなのです。つまりOFJは、間違ってもしーんとした沈黙の中で指揮者が一方通行的に指示し続けるような練習にはならないんです。

今までは、それは前音楽監督の右近先生のフレンドリーさゆえにできた技なのかな、と思っていました。ある意味、私たちは右近先生に甘えていたのかな、と。

ところが、それは違いました。小松先生はご自身のイメージをより具体的でわかりやすい言葉に変換し、丁寧に伝えるタイプの指揮者です。それゆえに言葉の量も多く指示もより細かく、私たちはぐうの音も出ずに黙ってしまうのかなと思いきや、団員は相変わらず、積極的に質問したり確認を求めたりしています。小松先生のお人柄もあるのかとは思いますが、やはりOFJのカラーが確固たるものになっていることを改めて認識し、運営の片棒を担ぐ立場として嬉しく思った次第です。

これからもOFJはよりよい演奏を目指し、インタラクティブな練習を続けたいと思っています。もちろんマエストロへ失礼のない程度に、ですけどね。

「フランス音楽の午後2018」プログラムについて

インペクを拝命しております狂箪笥(くるいたんす)です。次回演奏会も一見ごく普通、実はOFJらしいマニアックな選曲が並びました。そこで本日は次回プログラム3曲について、少しだけコメントさせていただきたく思います。

オルケストル・フランセ・デュ・ジャポン《フランス音楽の午後2018》
日時 2018年6月30日(土)14:00開演予定
会場 亀戸文化センターカメリアホール(JR・東武線亀戸駅下車)
指揮 小松 拓人
曲目
ビゼー 歌劇『美しきパースの娘』~ボヘミアの情景
ビゼー 劇付随音楽『アルルの女』第1組曲
ラヴェル 組曲『クープランの墓』(全6曲版)

前半はビゼー、後半はラヴェル。当団は基本的にフランス音楽が好きな人の集まりですが、一言でフランス音楽といっても色々な時代の色々なスタイルの作曲家がいるわけで、団員の嗜好によって以下のグループに分かれます(笑)
グループ1:ドビュッシー、ラヴェル大好き
グループ2:6人組大好き(ミヨー、オネゲル、プーランクなど)
グループ3:ロマン派大好き(ビゼー、グノー、フォーレ)
グループ4:フランス名曲大好き(幻想、オルガン付き、フランクd-mollなど)
グループ5:全部大好き!
・・・
…まあこんな感じのグループが、要は団員の数だけ存在するわけです。毎回の選曲が収拾つくわけがないwwww
というわけで今回は妥協に妥協を重ねて最終的にマエストロの判断を仰ぎ、この3曲になった次第です。

ビゼーといえば『カルメン』、『アルルの女』、以上!で終わるアマチュアオケも多い中、当OFJはこれらが選曲で通ることはありませんでした。やったことのあるビゼーは交響曲第1番、小組曲『子どもの遊び』。今回はさらにもう一捻りして『美しきパースの娘』です。これはビゼーが作曲した同名のオペラで、初演は失敗に終わったものの、劇中のバレエ音楽4曲が「組曲」として現在でもちょくちょく演奏されています。譜面の調達にあたり、組曲『美しきパースの娘』で探してもなかなかヒットせず、某楽器店楽譜係に問い合わせるもはっきりした回答が得られず、この『ボヘミアの情景』=組曲→なんだ譜面あるじゃん、と判明するまで少し時間がかかりました。全曲を通してフルートが活躍し、終曲では『カルメン』2幕のシプシーの歌よろしくどんどん加速し高潮する佳曲です。

続いて名曲『アルルの女』。ここでも当OFJはこだわりました。
『アルルの女』といえば有名なのは「メヌエット」、「ファランドール」…そう、第2組曲ですね。演奏会用の組曲は2つありますが、演奏頻度は圧倒的に第2組曲の方が多く、ミニチュアスコアも第2組曲がやたらと売れます。出版社もそのへんは心得ておりまして、「第1組曲」「第2組曲」を1冊にまとめて販売する出版社もあるようで…。
でも、ちょっと待った!第1組曲と第2組曲には大きな差があるのです。それは「作曲者の意思」。第2組曲はビゼーの死後、後輩のギローが演奏効果が良さげな4曲を編纂したもので、実は「メヌエット」は他の曲(歌劇『美しきパースの娘』)から持ってきており、原曲にはなかったりします。一方第1組曲はビゼー自身が、劇付随音楽全曲の中でお気に入りの4曲をセレクトしたもの。もちろんビゼーの生前は「第1組曲」しか存在しなかたわけで、今回は生前のビゼーが耳にしたであろう『アルルの女』組曲を皆様にも体験していただければと思います。「ファランドール」ではなく「鐘」で終わる『アルルの女』も、けっこう悪くないですよ。

そして休憩を挟んで、ラヴェルの『クープランの墓』。通常演奏する4曲ではなく、全6曲をピアノ原曲の順番で演奏します。
筆者の知る限りではこの全6曲版は日本ではアシュケナージ/N響が演奏したぐらい。色々調べたのですが現時点で過去の演奏記録が見つかっておらず、もしかしたらアマチュア初演かも知れません(情報求む!)。
全6曲(前奏曲、フーガ、フォルラーヌ、リゴードン、メヌエット、トッカータ)のうちラヴェル自身の管弦楽編曲は4曲のみで、曲順も前奏曲-フォルラーヌ-メヌエット-リゴードンと微妙に変更しています。で、作曲者がオーケストレーションを施さなかった「フーガ」と「トッカータ」については、過去にも色々な人が管弦楽版の編曲を試みており、音源も前述のアシュケナージ/N響の他、ハンガリー出身でつい最近亡くなったコチシュ・ゾルターンさんが独自のアレンジで録音しています。今回演奏するのはアメリカの作曲家マイケル・ラウンドによる編曲版を基本にしています。編成を拡大しての個性的なコチシュ版と比べ、他の4曲と編成を合わせ、よりラヴェルっぽいオーケストレーションを施した手堅い編曲です。

で、アンコールは…まだ決まっていません。どうなりますことやら。
では6/30、どうぞご期待ください!